[最終更新日]2020年01月15日↺ [読了目安]こちらの記事は5分程で読めます
『ZAIMの教室 財務諸表専門の学校』のこすぴーです。
トヨタ自動車〈7203〉の2018年度4Qの決算が発表されました。(2019.05.08発表)(以下、トヨタと表記)今回は、しゅうじ記者と一緒に分析をしてみましょう!
日本初の売上高30兆円を突破したということで、大変注目を集めましたね!決算説明会で、豊田社長も想いをたくさん語ってくれました。
そうだったね。今回はすこし趣向を変えて、豊田社長が決算説明会で語っていた想いも含めて、いっしょに見ていきましょう!わかりやすく解説していきます。
【まとめ】2019.05.08発表 (米国基準)
▶2018年4Q決算 増収増益
【増収】売上高 302,256億円 前年対比2.9%増 +8,461億円
【増益】営業利益 24,675億円 前年対比2.8%増 +676億円
【減益】当期純利益 18,828億円 前年対比24.5%減 △6,111億円
増収:欧州、アジアでの販売台数好調
増益:営業面の努力と原価改善
▶2020年3月期見通し 減収増益
【減収】売上高 300,000億円 前年対比0.7%減 △2,256億円
【増益】営業利益 25,500億円 前年対比3.3%増 +825億円
【増益】当期純利益 22,500億円 前年対比19.5%増 +3,672億円
減収:欧州・アジア圏の販売台数堅調
増益:償却方法の変更があるも原価改善にて増益
1.2019年3月期の決算状況!
まずは、2018年度(2019年3月期)の決算状況を、ホームページや説明会資料、決算短信にて振り返っていきましょう。
決算IR資料は、こちらにありますので、併せてご覧ください。
➤連結業績(増収増益)
資料1 売上高と各利益
▶気づき
【増収】売上高 302,256億円 前年対比2.9%増 +8,461億円
【増益】営業利益 24,675億円 前年対比2.8%増 +676億円
【減益】当期純利益 18,828億円 前年対比24.5%減 △6,111億円
▶分析のポイント
➤なぜ増収増益したんだろう?
➤増収の要因
あらためて、30兆円の売上高達成は、日本の企業にとってもおめでたいことですね。小林副社長も「30兆円超えはみんなが頑張ったことを示している。」とおっしゃっていました。
ほんとうにその通りですね。今決算での増収の要因となる、販売台数を振り返っておきましょう。
資料2 販売台数
日本と北米向けの自動車販売台数は下がったものの、
欧州が+2万6千台
アジア圏が+14万1千台
と伸びることによって、全体として1万3千台増えたとのことでした。
▶増収の結論:欧州、アジアでの販売台数好調
➤増益の要因
増益の要因についても、説明会資料に解説がありますのでご覧ください。
▶資料3 営業利益の分析
おおきくは、諸経費増加により△1,650億円があったものの、
営業面の努力+2,750億円
原価改善努力+800億円
が、下支えしてくれたおかげで、+676億円の増益となりました。
もちろん営業面の改善とは、さきほどの販売台数の増加が主になり、
+2,750億円のうち、1,100億円が販売台数の増加
によるものでした。
営業利益でも、顕著な数字として表れています。
▶資料4 所在地別の営業利益の分析
▶増益の結論:営業面の努力と原価改善
しかし、当期純利益が大きく減益になったのは、なぜなんでしょうか?
これは米国会計基準の方針による影響とのことでした。会計方針なので、余力のある人だけ確認しておいてください。
▶米国基準の会計方針による減益
営業外損失で【未実現持分証券評価損益△341,054百万円】を計上しているのが要因です。
<これまで>
持ち合い株式の評価額の変動は、【その他包括損益=当期純利益よりも下の項目】で計上していましたので、当期純損益に影響はありませんでした。
<これから>
しかし、FASB(米国財務会計基準審議会)は、【持分証券の時価変動を純損益に計上する方針】を出しました。(トヨタは米国基準で財務諸表を作成しています)
そのため、トヨタは持ち合い株の評価額を、営業外損益で計上することになりました。
(マイナス実績なのは、2018年度の株式市場が下降気味なことが要因だそうです)
2.2020年3月期の見通しを見よう!
ここからは、2019年度(2020年3月期)の見通しを確認しておきましょう。
*補足ですが、【未実現持分証券評価損益】は見通しには入れてないようです
▶資料5 2020年3月期見通し
▶気づき
【減収】売上高 300,000億円 前年対比0.7%減 △2,256億円
【増益】営業利益 25,500億円 前年対比3.3%増 +825億円
【増益】当期純利益 22,500億円 前年対比19.5%増 +3,672億円
▶分析のポイント
➤なぜ減収増益の見通しなんだろう?
➤減収の要因
▶資料6 販売台数(2020年3月期)
来期の販売台数は、ゆるやかな堅調を維持する見込みのようです。
やはり、日本・北米よりも、欧州・アジア圏、とくに中国向けの台数が伸びるとの見方が強いもようです。
▶減収の結論:欧州・アジア圏の販売台数堅調
➤増益の要因
▶資料7 販売台数(2020年3月期)
利益に関しては、引き続き、原価の改善による増益を見込んでいるもようです。
また、その他+1,775億円のうち、+1,500億円が償却費変更による影響であり、
定率法法から定額方法に変更とのことでした。
▶増益の結論:償却方法の変更があるも原価改善にて増益
3.豊田社長が危機感を抱くワケとは?
それにしても、豊田社長はいろいろなキーワードでミライを語っていましたね。売上高30兆円達成したとしても、豊田社長の危機感も十分に伝わりました。
すこし振り返ってみましょう。なぜ、ここまで危機感を抱くのか?を分析してみたいと思います。
豊田社長のメッセージはこちらからも見れますので、ぜひ皆さんも一読をおすすめします。今回は3つご紹介します。
メッセージ①
『年輪を刻むように、着実に成長し続ける会社にならなければならない』
▶社長メッセージより
急成長しても急降下すれば、多くのステークホルダーに迷惑をかける。どんなに経営環境が悪化したとしても、むしろ、悪化した時ほど、年輪を刻むように着実に「成長し続ける会社」にならなければならない。
豊田社長がこう思うようになったのは、リーマンショック後の3年間で赤字に転落した時だそうです。
ZAIMの教室でも紹介しているとおり、企業分析の時には『成長性分析』は欠かせず、右肩上がりで伸びているのかチェックするようにしています。
しかし、講座でもお伝えしましたが、無理な成長はいつか破綻します。
もしくは不正や不祥事がセットで付きものです。
企業も人も同じで、自然な形で成長することが求められます。
トヨタだって、創業80年以上かけて30兆円の売上に到達しました。
急降下せずに、着実に成長することを望んでいるのです。
そんな経験もある豊田章男社長なので、
前年より成長しても危機感をいだくのでしょう。
ぜひ、ZAIMの教室でも『成長性』の考え方を記事にしているのでご覧ください。
メッセージ②
『CASEと呼ばれる技術革新によって、クルマの概念そのものが変わろうとしております。』
▶社長メッセージより
「CASE」と呼ばれる技術革新によって、クルマの概念そのものが変わろうとしております。これからのクルマは、情報によって、町とつながり、人々の暮らしを支えるあらゆるサービスと繋がることによって、社会システムの一部になります。それは、これまでのビジネスモデルそのものが壊れる可能性があるということを意味しているのです。「CASE」によって、クルマの概念が変われば、私たちのビジネスモデルも変えていかなければなりません。
ここで、自動車業界でもキーワードにもなるCASEとは何か、振り返っておきましょう。
▶CASE(ケース)とは
➤Connected つながるex)クルマとネットがつながる
➤Autonomous 自動化ex)クルマが自動運転になる
➤Shared シェアリングex)クルマの所有からシェアになる
➤Electric 電動化ex)ガソリンではなく電気自動車へ
近未来は、この4つのキーワードで創られていくということです。特に自動車業界は、密接にかかわるキーワードになります。
*トヨタでの活動実績もこちらからご覧になれます
つまり、従来のクルマの価値ではなく、異なる形での価値を提供をしなければ、
『これからの世の中からクルマは必要とされない』という危機感があるということです。
下記のようにも強いメッセージで豊田社長は語っていました。いわゆる、変化のためにオープンイノベーションともいうべきスタンスを示しています。
▶社長メッセージより
地球環境を考えると、Electric(電動化)つまり電気自動車が必要になりますが、それは『普及』してこそ意味がある。そのためには、“いままでと違う発想”が必要になり、だからこそ、『仲間作りがキーワードになる』
日本で一番大きな会社でもあるトヨタがここまで危機感を感じて、変わろうとしていることに、時代の大変化を感じますね。
きっと、これからは『CASEで異業種と組む』ということがトヨタには増えるでしょうね。CASEへの投資も増えると説明会でも協調していました。
メッセージ③
『過去の成功モデルに頼っていては、未来はありません』
▶社長メッセージより
とにかく良いと思ったことはやってみる。間違っているとわかれば、引き返して、別の道をさがす。“やってみながら考える”ということが重要だと思っております。成功体験をもった大企業をフルモデルチェンジするということは、本当に時間のかかることだと思いますが、過去の成功モデルに頼っていては、未来はありません。
これもなかなか印象に残るメッセージでした。大企業でも過去の成功モデルにとらわれないという意志表示ですよね。
ほんとうに、豊田社長は、今現時点での危機感を感じつつも、未来を見据えているのだと感じました。ソフトバンクと戦略的提携をしたのもこういう想いからの行動だと思われます。
企業の成長性を見抜くひとつに、『オープンに他社と提携しているか?』というのもひとつの指標となりそうです。
本当にその通りだね。今は保護主義の風潮が強いけれども、本当はこれからの時代は、共創(ともにつくりあげる)の考え方が大事だね。いろいろな会社を企業分析をしていると、どの企業もこの『共創』の考え方が強くなっている。
この令和の時代、一瞬一瞬が変化の時代なのだと感じます。
みなさんもぜひ、今回の豊田章男社長のメッセージを見て欲しいと思います。ミライに期待しつつも、大企業の変化がせまられる危機感が伝わります。できれば、動画(第Ⅱ部の冒頭20分程度)で見るのも、雰囲気が伝わるのでおすすめします。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました^^
下記のコラムも、応援の想いをこめて書きあげています。ひと休みしたら、ぜひご覧ください。
▼財務諸表・決算書を勉強してみたい方はどうぞ^^