[最終更新日]2019年11月8日↺ [読了目安]こちらの記事は5分程で読めます
ZAIMの教室です。株式会社ミクシィ(2121)の2018年4Qの決算が発表されました。
今回は、キャスターのしゅうじ記者といっしょに分析しましょう。
それにしても、『ミクシィヤバくない!?』とわたしの友人たちも盛り上がっていました。YouTubeはじめ、SNSでも議論が起きていますね。
主力事業のモンスト*の売上が不振続きで、どうにも否定的に取り上げられていますね。ですが、ミクシィの財務体質を見たことありますか?
*モンスターストライクの略。有料スマホゲームで2013年よりサービス開始。
今回を機に見てみたんですが、びっくり!超健全体質じゃないですか!!
そうなんです。今回は、ミクシィ(mixi)の財務体質も一緒に分析して、『ミクシィが減収減益だからって本当にヤバいのか?』探っていこうと思います。
1.2019年3月期の決算状況!
Point ➤減収減益 モンストの不振がつづく
まずは、2018年度の決算状況を、ホームページや説明会資料、決算短信にて振り返っていきましょう。
決算IR資料は、こちらにありますので、併せてご覧ください。
▶資料1 売上高と各利益
(2018年4Q決算説明会資料より)
▶気づき(日本基準)
【減収】売上高 1,440億円 前年対比23.8%減 △450億円
【減益】営業利益 410億円 前年対比43.3%減 △313億円
【減益】当期純利益 265億円 前年対比36.5%減 △152億円
▶分析のポイント
➤なぜ減収減益したんだろう?
この売上と利益の落ち込み具合を見ると、心配しちゃいますね。原因はやはりモンストなのでしょうか?
そうですね。ARPU*の減少が落ち込んで、利益が稼げなくなっているもようです。いろいろな意見はありますが、あまり課金しにくいゲーム運営になっているとの声もあります。
*Average Revenue Per User…1ユーザーあたりの平均的売り上げ
ただ、世界累計利用者は5000万人を突破ということで、利用者数は伸びてはいるようなんですね。資料2も見てみました。
▶資料2 累計利用者数
(2018年4Q決算説明会資料より)
そして、なんといっても驚きなのは、
売上の96%がモンストからの収入
です!
事業別の売上と利益ものぞいておきましょう。
▶資料3 セグメント別の売上と利益
(2018年4Q決算短信より)
総売上高1,440億円のうち、エンタメ事業が1,386億円なので
売上高の96%がモンストで稼いできています!
*営業利益に関しても、ほとんどすべてエンタメ事業=モンストで稼ぎきっています
これでは、複数セグメントを持っているといえず、
実質は、単一セグメントで戦っているようなものですね。
ほんとうは、モンストにかわる新しいゲームコンテンツが生み出せればいいのですが、
企画や開発人員の体制が整わないようです。
そのため、モンストの不振により、ユーザーからは心配の声があがっているようです。
2.2020年3月期の見通しを見よう!
Point ➤減収減益 前期比88%減の予想…!
ここからは、2019年度(2020年3月期)の見通しを確認しておきましょう。
▶資料4 2020年3月期の見通し
(2018年4Q決算説明会資料より)
▶資料5 営業利益変動額
(2018年4Q決算説明会資料より)
▶気づき
【減収】売上高 1,000億円 前年対比30.6%減 △440億円
【減益】営業利益 50億円 前年対比87.8%減 △360億円
【減益】当期純利益 30億円 前年対比88.7%減 △235億円
▶分析のポイント
➤なぜ減収減益の見込みなんだろう?
これはかなりの減収減益見込みですね…!ネットがざわつくのも理解できます。
要因はおなじく、モンストのARPU*の悪化だそうです。こちらには、新規ゲームなどの売上高は含まれていないようですね。
*Average Revenue Per User…1ユーザーあたりの平均的売り上げ
気になって、モンストをどう立て直すのか、決算資料をわたしも見てみました。
▶資料6 モンスターストライクのリバイブ
(2018年4Q決算説明会資料より)
➤原因
ライトユーザー層の消費意欲が低迷
➤今後の方針
①3周年で劇的にリバイブを起こしたマーケティング責任者をモンスト事業のトップにする
②「仲間とワイワイ共闘することによる興奮」という原点回帰(ライトユーザーの取り込み)
やはり、現状のゲーム運営では問題を抱えているのは、ミクシィ側も認識しているのがうかがえます。
人員不足のなか、再起を期待できる人事配置をしているのも、
相当な立て直しをせまられているように感じます。
3.ミクシィ本当にヤバいのか!?
Point ➤実は、財務体質が超優良企業である!
冒頭でもお話したように、「じゃあミクシィはヤバいのか?倒産の危機なのか?」と心配したくなりますが、ちょっと待ってほしいです。
これまで、ZAIMの教室でも、無料講座で企業分析の方法をお教えしているのですから、せっかくなので一緒に分析してみましょう!
➤収益性分析 儲かっているのかな?
▶資料7 収益性
なんと!売上総利益率(粗利率)は驚異の85%超えだったんですね!営業利益率も30%前後を位置している高収益体制とは…!
こういうミクシィのようなネットコンテンツ業界は、『原価のないビジネス』ともいわれています。かかる経費といえば、新コンテンツのための人件費と制作費ぐらい。すごい高収益体質ですね。
これまで、食品業界や自動車メーカーなどの、一般事業会社の財務諸表を主に見ていたので、驚きを隠せません…!
たしかに2020年3月期の見通しでは、営業利益率5%まで下がるものの、高収益体質でこれまで稼げたということです。
つまり、新規ゲームコンテンツがヒットすれば、高収益企業になる業界にいるということであります。
課題なのは、モンストの不振というより、
次の新規ゲームコンテンツを生み出す力
なのではないかと、思います。
そのためには、有能なコンテンツ制作者が必要なので、人員の体制が求められますね。
➤安全性分析 倒産しないかな?
▶資料8 安全性
さらに驚きなことに、ミクシィの特徴として、
『超安全性の高い財務体質なこと』
が、あげられます。
貸借対照表の総資産のうち、自分の資産である純資産がどれぐらい占められているかの割合「自己資本比率」が…
驚異の93.2%!(2018年度)
つまり、ほぼ借金などを意味する負債がないというのが、ミクシィの財務体質なのです。
これがどれぐらいのイメージなのか、実際の貸借対照表をもとに縮尺図にしてみましので、ご覧ください。
▶資料9 貸借対照表(比例縮尺図)
これはすごい!ミクシィの資産のうち、ほととんどが【現金】で占められている!
そして、その調達方法を右側で見ると【利益剰余金】で調達しているということなんですね。
その通りです。これは、いままでのモンストで稼ぎに稼いだおかげで、財務体質が超健全化しているということであります。
参考に、これまでの利益推移が決算資料にありましたので、見てみましょう。
▶資料10 ミクシィの歴史
(2018年4Q決算説明会資料より)
2013年にモンスト事業が開始されてから、ほんとうに大きく稼いでこれたおかげで、
財務体質がかなり良くなりました。
そのため、これから何期か利益が赤字や減益になったとしても、
それをカバーできるほどの【現金】があるということです。
まだ、手もとにある現金は、なんといっても、
1,444億円
も、あるのですから…!
それよりも、このあまりある現金(キャッシュ・リッチ)を使い、有能な人員体制をはやく整え、
①モンストを1~2年で立て直し
②新規コンテンツを2年後くらいにはヒットさせる
この2つが、非常に求められます。
➤成長性分析 大きくなるかな?
▶資料11 成長性
*外部要因と内部要因の分析は省略します
すべてが、右肩下がりで推移しています。
さきほども述べたとおり、ミクシィは財務の安全性のある企業のため、
当面は倒産や破綻などといったことは起きにくいです。
そのため、あせらずに数年単位でテコ入れを果たすため、
人材投資に資金を回し再起を図れば、十分盛り返せる財務構造をしています。
場合によっては、新規事業のために、既存事業の撤退を考えてもよいぐらいです。それは、決算短信でも述べられていました。
▶決算短信(一部抜粋)
その他のサービスにつきましては、全体の利益を鑑みて一定の投資は行うものの、市場環境の変化等により成長戦略が描けなくなった事業については早いタイミングで撤退等の判断をしていくなど、選択と集中を進めてまいります。
高収益、超安全、成長性だけがまだつかめず…!といったところでしたね。多少、減益が続いたとしても、期待できそうです。パズドラを運営するガンホーもリバイブしているらしいので、期待したいところです!
ほんとうにその通りですね。モンストは、以前、わたしもはまってしまうほど面白いコンテンツです。
ぜひとも、財務が超安全なうちに、今度は、息長く続く新コンテンツの発表に期待しています!
決算ニュースと財務諸表もいっしょに分析してみると、面白いですね!5月はたくさん上場企業の速報があるので、引き続き分析してみます。
<参考>
▶損益計算書の比例縮尺図
▶キャッシュ・フロー計算書の比例縮尺図
ここまで読んでいただき、ありがとうございます^^
財務諸表や決算書を読めるようにしたい方向けに、個人指導を行っています!
トレーニングをしてみたい方は、下記のコースをご覧ください。