[最終更新日]2020年01月06日↺ [読了目安]こちらの記事は5分程で読めます

『ZAIMの教室 財務諸表専門の学校』のこすぴーです。
東京海上ホールディングス〈8766〉の株主総会が2019.6.24に行われました。お相手は中小企業診断士の資格勉強中のはるきさんです。(以下、東京海上HDとする)
よろしくお願いします!一度、永野社長にお会いしてみたかったので、社長退任前に参加できてよかったです!

そうですね。今期限りの社長退任ということで、渾身のプレゼンは圧巻でした!
今回は、東京海上HDは、なぜ今、海外戦略へ積極的なのか?質疑応答と併せて、探っていきましょう!
➤目次
1.東京海上の2019年株主総会情報!
Point ➤総会土産は北海道担振地方の銘菓子 ななかまど
2. 東京海上の株主総会の雰囲気は?
Point ➤水災・風災の保険、海外事業への質問多数!
3.海外保険事業をなぜ展開するのか?
Point ➤自然災害が多い日本だからこそリスク分散する!
\ YouTube動画で解説中 /
1.東京海上の2019年株主総会情報!
Point ➤総会土産は北海道担振地方の銘菓子 ななかまど
▸資料 株主総会の会場
【東京海上HD 株主総会 2019.6.24@大手町】
株主総会、無事に終了💪
永野社長のプレゼンが好評で、社長から会長に役職を移るので挨拶されてました。
またブログにもまとめます✍️ pic.twitter.com/FbykmgEUST

第17回の株主総会はたくさんの参加者で賑わいしました!印象的だったのは、やはり今期限りでの退任のため、力の入った永野社長のプレゼン、そして最後に挨拶とともに、後任の小宮氏をご紹介したことです。
力のこもったプレゼンはぜひ第3章で見てもらいましょう!さっそく、株主総会情報を振り返ります。
▸資料 招集通知
【開催情報】日時:2019年6月24日(月)AM10時
場所:パレスホテル東京 2階「葵」
質疑応答も盛り上がり、第2章で詳しく述べるため、当日の議事進行をご紹介しておきます。
➤参加者数
パレスホテル東京で開催しましたが、1,000~2000名の参加者でした。
➤参加者層
ご年配の方を中心に、保険の代理店の方も数多くご参加されていた印象です。
➤配当金
前期より20円増配し、1株あたり180円になります。7期連続の増配となります。
➤お土産
北海道担振地方の銘菓子「ななかまど」でした。
ななかまどはミニバームクーヘンのようなものです。
(とってもおいしくいただきました!)
▸株主総会のお土産
➤スタッフ
元気よく挨拶して迎えてくれました。
さすが就職ランキングやイメージでトップをとる企業らしく、
ステキで誠実な対応をしてくれる方が多い印象ですね!
➤展示
特にはありません。
➤議事進行
・議事運営の説明
・監査報告
・永野社長より事業報告(15分)
・質疑応答(10:30-12:02)
事業報告は永野社長より、経営戦略とともに紹介されていました。
第3章にてご紹介します。
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2.東京海上の株主総会の雰囲気は?
Point ➤水災・風災の保険、海外事業への質問多数!

今回は、【水災・風災への保険】と【海外事業】に関する質問が数多くありましたので、いくつかご紹介していきます。会場は録音が禁止のため、多少の語弊があることご了承ください。
Q.自然災害が日本はとても多い。いざというときに東京海上が役に立とうというときに、水・風などの災害に入っていなかったということもある。東京海上内での普及率、代理店がどのようにアプローチして対応しているのか。どのぐらい力を入れているのか。きちんと保険営業時に、水災・風災の保険までの付帯を説明をしているのか。また、災害を防止するための活動をしているのか。
まさにわれわれが考えていることを体現してくれたご発言で恐れ入ります。
全国でご契約内容確認運動をしている最中です。保険が意向通りにあるのか確認しています。昔の保険は火災のみ対応ということもあります。水災・風災の付帯をつけるようおすすめをしています。すべての補償がフルカバーである保険をおすすめして説明をしています。
過去、実際に保険金を受け取れないケースがありました。普及率を上げようとしています。個人向けは付帯率があがっています。(火災保険からの付帯率67%くらい)( 中略)
損害保険の認知と啓蒙をしています。防災・減災へのセミナーや防災への研究を行っています。TRCというコンサル会社と協力して、万一への対応、啓蒙活動をしています。行った時の事故のプランを啓蒙しています。
CSRとして防災授業をしている。社員や代理店の方が小学校へ訪問して、防災・減災への取り組みをしています。累計で540回、のべ4万人に達する受講生です。地道な活動で取り組みを続けています。
代理店も知識を工夫して取り組んでいます。お客様に土地柄の過去の歴史や災害なども説明して、しっかりとしたおすすめをするようにしています。
たしかに、2018年度は自然災害の多い年になりました。
・大阪府北部地震
・西日本豪雨
・北海道担振東部地震
・台風21号
・台風24号
いただいた資料の数字を見ると、東京海上HDにおける保険金請求の受付件数は
2018年度 約42万件です。
2011年の東日本大震災の時が約23万件
以上を考えると、ここ最近の自然災害による被害の甚大さがうかがえます。
そして、特徴的なのは、台風や大雨による水災・風災が増えているため
保険の見直しが早急に求められているということでした。
水災・風災までカバーしていない保険が、
自然災害後に把握するパターンが多いということでしょう。

質問された方も、保険の代理店の方ということで、実際のお仕事でお客様をお守りできないケースが多いから、おそらく質問されたのでしょう。
海外事業は文化的な理解が大前提である
次の質問は海外事業に関してです。
東京海上HDは、海外戦略として積極的に海外事業の割合を増やしています。
資料によると、2002年では3%だった事業利益が、
2019年予想値では、47%まで増加することを見込んでおります。
▸資料 リスク分散による事業の安定化
(東京海上HDのHPより)
そのうえで、質疑応答を振り返ります。
Q.これからの海外投資・買収は積極的に行っていくのか。
海外事業は、経営の屋台骨を崩さないように取り組んでいます。収益機会を逃さず、持続的な利益成長を図り、そして、戦略的なM&A(企業買収のことです)を考えます。先進国と新興国への展開を、バランスよく取り込んでいきたいです。
内部成長とM&Aの両方をバランスよくしていきたいです。内部成長が基本であり、地理的に分散がききそうなところなど、“常に常に”考えています。ガバナンスが追い付かないうちにM&Aするなどはしないように、慎重に進めていきたいです。
今後、どういう風にやっていくかはさまざまな検討をしています。今までとおり、文化的にフィットしているかを重視します。昨年の取り組みは小規模のものでありました。内部成長、そして、戦略的に、文化的にフィットしたものであることが大前提です。買収をしたいがために、M&Aをするわけではないことを理解してもらいたいと思います。
東京海上HDは新興国への展開として、下記のような取り組みをしています。
▸資料 新興国の成長の取り込み
(東京海上HDのHPより)

今期の決算状況でも、災害の多い年だったのにも関わらず、海外保険事業の成長が下支えしてくれたおかげで、経常収益、経常利益ともに増収増益を達成することができたんだ。
▸資料 2019年3月期決算
(東京海上HDの招集通知より)
だから、質疑応答でも話題にでたわけなんですね!
3.海外保険事業をなぜ展開するのか?
Point ➤ 自然災害が多い日本だからこそリスク分散する!
海外事業への経営戦略も含めて、永野社長が15分間のスピーチをしてくれました。社長退任前、最後のスピーチともあって、あまり資料は見ずに堂々たる振る舞いの熱弁で圧巻でした!

本当に感動的なスピーチだったね。第3章では、第2章で紹介した『自然災害』と『海外事業』にはどういう繋がりがあるのか?永野社長の経営戦略を紐解いてみましょう!
『2018年度は自然災害の多さが目立った』
▸資料2018年度振り返り
趣旨・代理店とともに、力を合わせて保険金の対応を行った
・母国である自然災害国で、日本を支えることになった
・2018年度は42万件、東日本大震災は23万件
・のべ5万人を超える社員を導入して1日でも早い保険金のお支払いを行った
・「自然災害」は日本が抱える社会課題である

特徴的だったのは、こうした社会貢献を行う根拠として、近江商人の「三方よし」、渋沢栄一の「道徳経済合一説」、「三菱三綱領」を引き合いに出していたことでした。SDGsが新しい考え方のように言われるが、日本では当たり前の精神であると強調していました。
▸資料 創業時からの変わらぬ想い
(東京海上HDのプレゼン資料より)
『リスク分散による事業の安定化』
▸資料 リスク分散による事業の安定化
(東京海上HDのプレゼン資料より)
趣旨・自然災害が多い近年でも利益が安定している
・下支えしているのは海外保険事業の成長率である
・収益力が着々と高まっている
・ボルトオンのM&A*を行っている
*既存のビジネスモデルを補完する小規模企業買収のこと

国内だけの事業だけでは自然災害の脅威もあります。そのため、徐々に海外事業へのポートフォリオを展開していくのが経営の狙いとなります。
ただし、あくまでボルトオン型でのM&Aを強調していましたね。そして、何よりも文化的な理解を大事にする、と。それは、質疑応答でも、「具体的な文化理解とは?」と質問された時に、クリス氏*に状況を永野社長は答えさせてました。*クリス氏は東京海上HDに買収された会社の方(旧:HCCインシュアランス・ホールディングス社)
Q.文化的な理解の説明で、文化のすり合わせというが、具体的には、どういう風に取り組んでいるのか。
買収前と買収後の話を、クリスぜひしてほしい。
東京海上の一員になったのは4年前。まさにカルチャーが決定的な要因でありました。はじめてのミーティングは藤井さん。30分だけかと思いきや1時間30分と。内容は「お客様に何ができるのか?」というビジネスの話だった。
ビジネスに対する見方が似ているということがわかった。ぴったりくる、しっくりくるという見方がそこで強まった。約束は双方で守られており、文化的な理解は、人に表れている。なぜなら、一役員としてこうして登壇できていることがM&Aの成功の表れである。
保険が好きか、投資じゃなくて保険としてやりたいか、マーケット(お客様)を大事にするか、ケミストリー肌合いがあうかどうか、双方向の対話を通して、地道な活動を繰り返しています。
▸資料 海外における買収を通じたリスク分散
(東京海上HDのプレゼン資料より)

「いざというときに、お客様や地域社会の役に立つ」このために、国内事業の単一セグメントだけではなく、海外事業でリスクを分散させていくといった戦略のようです。
保険会社は基本的には、自然災害などがあると保険金を支払うので、利益構造を圧迫しますもんね。そのためにも、海外事業でも利益構造を獲得する経営戦略だということがわかりました。
資料にも、2018年度の利益の3割程度の自然災害発生保険金と紹介されています。

その通りですね。しかし、あくまで、『文化的な理解がなければ企業買収はしない』と、ソフト面を非常に重視した戦略のようです。日本企業はM&Aの失敗が多いと言われている中で、この考え方はとても重要だと思います。
このように、自然災害が多い日本で保険業を営むには、「いざ」という時にお客様をお守りするために、国内以外での収益基盤を築いておく必要があるということですね。
▸資料 自然災害の影響で利益の3割に影響
(東京海上HDのプレゼン資料より)
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いかがでしたでしょうか?東京海上HDがなぜ海外事業を積極的に展開しているのか?おわかりいただけたでしょうか。収入保険料だけでいえば、35.2%を占めている海外事業の、今後のますますの発展を応援していきましょう!
<質疑のあったテーマ>
・従業員の働き方改革を教えて欲しい
・ダイバーシティ推進を今後どのように図るのか
・水災・風災への保険の推進をどれぐらいしているのか
・防災への取り組みはしているのか
・消費税増税への影響を教えて欲しい
・海外事業への投資は積極的に行っていくのか
・マイページ登録への煩雑さが楽にならないか
・社外取締役の方が監督機能についてどう思っているのか
・マングローブの植栽はどれぐらいしているか、今後もどれぐらいするか
・社会貢献として、文化・芸術への貢献はどうなのか
・社外取締役の再任が長いが、任期の考え方を教えて欲しい
・M&Aで企業文化のすり合わせが大事というが具体的には?
・国別、地域別の財務指標を教えて欲しい、最終目標もあわせて
・執行役には外国人がいるが、いつごろ取締役には選任されるのか
・取締役を選任する基準と誰が選んでいるのか、取締役会に出席した日数を教えて欲しい
・水災・風災への付帯保険を薦めて欲しい

ここまで読んでいただき、ありがとうございました^^
下記のコラムも、応援の想いをこめて書きあげています。ひと休みしたら、ぜひご覧ください。
▼財務諸表・決算書を勉強してみたい方はどうぞ^^