[最終更新日]2019年12月17日↺ [読了目安]こちらの記事は7分程で読めます
『ZAIMの教室 財務諸表専門の学校』のこすぴーです。
楽天株式会社〈4755〉の2018年度4Qの決算が発表されました。
今回は、現在、中小企業診断士の資格勉強中で商社勤務のはるきさんと、一緒に見ていきたいと思います。
よろしくお願いします。楽天は最近、話題の尽きない会社なのでとても興味深いですね。
そうですね。最近だと、ヴィッセル神戸にてサッカー選手のイニエスタを獲得したり、楽天イーグルスの楽天生命パーク宮城で『完全キャッシュレス化』をしたりしていますからね。
あとは何と言っても、通信事業への参入ですね。ドコモ・au・ソフトバンクと三強ひしめく中に、第4のキャリアとして、活躍ができるのか興味があります。
今回は、決算資料からも、通信(携帯)事業参入の話題にも触れたいと思います。
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1.2018年度の決算状況を見よう!
みなさんもご存知のとおり、楽天株式会社は『楽天エコステム(経済圏)』と称して、本当にさまざまな事業を展開していますよね。こすぴーもよく楽天ポイントにお世話になっているほどです。
▼楽天の事業(抜粋)
➤インターネットサービス
・楽天市場
・楽天トラベル
・楽天KoBo
・プロスポーツ
(楽天イーグルス)
(ヴィッセル神戸)
➤フィンテック
・楽天カード
・楽天銀行
・楽天証券
・楽天生命
・楽天損保
まずは、2018年度の決算状況を、ホームページや説明会資料、決算短信にて振り返っていきましょう。
決算IR資料は、こちらにありますので、併せてご覧ください。
➤連結業績(増収増益)
▶資料1 売上高と営業利益
(2018年度決算説明会資料より)
▶資料2 2018年度過去最高益
(2018年度決算説明会資料より)
▶気づき
➤【増収】売上高 前年対比16.6%増の1,101億円 (+157,006)
➤【増益】営業利益 前年対比14.1%増の170億円 (+21,081)
▶分析のポイント
➤なぜ増収増益したんだろう?*楽天は「国際会計基準(IFRS)」を採用しています
さすがIT企業だけあって、営業利益率15%以上と、高い利益率を維持していますね。
他の業界と比べるととても魅力的だよね。この高い利益率と増収増益を支えるのは、フィンテック事業の好調が支えていそうなんだ。
➤セグメント別の決算
▶資料3 セグメント別の業績
(2018年度決算説明会資料より)
このセグメント別の解説は別途解説するので、ここでは割愛するね。
➤組織体制の再編
2019年4月より、組織編制を新たに再編して、あらたに、『楽天ペイメント(株)』を設立するもようです。
▶資料4 新組織体制
(2018年度決算説明会資料より)
これは、キャッシュレス化する世の中に対応するためにも、楽天の持つ決済事業を統合する狙いがあるようです。
たとえば、簡単に、たくさんの決済手段を行えるためにも、『新楽天ペイアプリ』をリリース予定です。
▶資料5 新楽天ペイアプリ
(2018年度決算説明会資料より)
決済方法が、キャッシュレス化されればされるほど、楽天の持つEC事業が活発になりますからね。
ユーザーがスマホ上で『便利だ』と認識すれば、リアル店舗よりもネット店舗でモノを買うようになります。
*EC事業とは、eコマースとも言われ、「Electronic Commerce(電子商取引)」のことです。インターネット上で、契約や決済を行い、モノやサービスを売買する総称です。
そうだね。すでに実験的に、楽天生命パーク宮城とノエビアスタジアム神戸では導入しているようだね。
▶資料6 スマートスタジアム
(2018年度決算説明会資料より)
➤送料全店舗統一化
資料7 送料統一
(2018年度決算説明会資料より)
楽天市場での送料を、すべて統一化させるプロジェクトも今後進めるようですね。
現状では、「手数料がわかりにくい」との声もあり、ユーザビリティの向上を目指すようだね。
2.楽天の稼ぎ頭はやっぱり楽天カード!
ここからは、2018年度、増収増益を達成した要因を、さきほどのセグメント別(資料3)で見ていきましょう。
資料3 セグメント別の業績
(2018年度決算説明会資料より)
▶気づき
➤【堅調】インターネットサービス
売上高 前年対比15.9%増収の788億円(+108.1億円)
営業利益 前年対比5.0%減益の95.7億円(△5.1億円)
➤【好調】フィンテック事業
売上高 前年対比23.3%増収の410.8億円(+77.6億円)
営業利益 前年対比9.7%増益の79.9億円(+7.1億円)
▶分析のポイント
➤フィンテック事業の何が好調だったんだろう?
こうして確認してみると、基盤であるインターネットビジネス事業は、売上高こそ稼げたものの、利益は稼げませんでした。
いっぽう、フィンテック事業は売上が小規模ながら結果を出す「楽天の稼ぎ頭」になっているもようです。
フィンテック事業の、もうすこし詳細な数字を見ていきましょう。
資料8 フィンテック事業
(2018年度決算説明会資料より)
やっぱり、こうして見ると『楽天カード』の優秀さが目立ちますね。今季の利益170億円中、楽天カードだけで33億円を稼いでくるんですから。その割合なんと20%!!
CMでよくやってる『楽天カードマ―ン!』もすごいことですよ。時期を選べば楽天カードを作るだけで、8000ポイントぐらいもらえるんだから、会員数も伸びるはずだ。
楽天カードが好調だと、関連して、『楽天銀行』『楽天証券』なども順調な稼ぎ頭となっています。手数料収入は、楽天カードの会員基盤の拡大次第で夢があります。
ここで、楽天が『カード・銀行・証券・生保の事業』もやっていることを、初めて知った方もいると思います。
そこで、楽天の貸借対照表を見てみると、
『一般的な事業会社とは違う構図の貸借対照表』
ということを、すこしお見せします。
▶資料9 貸借対照表
(2018年度決算説明会資料より)
いちばん左の楽天(連結)で見ると、ものすごーーーい負債を抱える会社のように見えるんだけど、実はその中身はフィンテック事業のものであります。
たとえば、楽天銀行は『銀行業』なので、利用者から預かった預金は、貸借対照表上は『負債』に区分されます。
なぜなら、利用者が引き出したいと思えば、その預金を楽天銀行は返さないといけませんもんね。
そのほかにも、証券業も同じように、投資家から集めたお金を運用しますが、預かっているうちは『負債』に区分されます。
ここらへんの違いは、また別途記事にしてまとめようと思います。
一般的なメーカーなどの事業会社とこういう銀行や証券、生保の財務諸表の見方は違うんだ。
3.通信事業へ参入の勝算はあるの?
さいごは、いま一番話題となっている「楽天 通信(携帯)事業への参入」について、3つのポイントで解説していきます。
「いつから開始されるの?」と思われるかもしれませんが、実は2019年10月と今年度のうちに開始だそうです。
なかなか、他の記事やニュースを見ていると、楽天の通信(携帯)事業への参入には否定的な目線での意見が多いのが現状のようです。
せっかく株主総会にも参加したし、今回は、応援の意味もこめて肯定的な目線で書いてみるよ!
挑戦なので応援したいですね。また、参入までの時系列があったので載せておきます。
資料10 通信事業の歩み
(2018年度決算説明会資料より)
▶ポイント1 楽天エコシステムとの相性が抜群である
資料11 楽天エコシステム(経済圏)とは?
(楽天HPより)
おそらく楽天は、通信事業を楽天エコシステムに組み込みたいんだと思います。
これはよくよく考えてみると、とても相性がいいサービスですよね。
たとえば、楽天カードのように、「今、入会したら楽天市場で使えるクーポン5000円贈呈!」とか、今後、通信キャリアの顧客を他の楽天サービスと紐づけることができます。
実際スタートしたら、
「楽天カードで支払えば、楽天カードと携帯でのダブルポイント」
「他社から乗り換えたら1万ポイントバック」
など、いかようにもできると思います。
そこまでポイントバックしても、息長く楽天エコシステム内で売買を続けてくれる新規ユーザーが獲得できるのであれば、最初のコストは安いものです。
____しかも。
携帯代への不満は、ここ数年話題にもあがっているのも事実です。
世界に比べると日本のキャリアの通信費の高さを指摘する声もありますし、
最近では、菅官房長官も4割ほど下げるべきだと提案するほどですから…ね。
だから、通信キャリアの獲得はきっと悲願の新規事業なんだと思う。しかも、ユーザーメリットもあるからね。
たしかに、これは当たればデカいですよね。楽天カードでの成功事例がありますし、あながち夢物語でもない気がしてきました。
ぜひ、通信業界に価格競争をもたらして、通信費が下がると嬉しいね。
▶ポイント2 設備投資額が少ないのにはワケがある
とはいうものの、ポイント1は、あくまで通信事業が安定的に供給できたらのお話です。
なかなか後発キャリアがすんなりと通信事業を行うにも高いハードルがあります。
そのひとつに、設備投資額の少なさを指摘する声も多くあります。
参考に携帯3社と楽天の投資額を比べてみましょう。
▶携帯3社の2018年3月期(1年間)の設備投資額
①ドコモ 5,764億円
②KDDI 5,608億円
③ソフトバンク 3,704億円
▶楽天 2025年までの設備投資額(通信事業のみ)
6,000億円
これを見ると、ドコモが1年間にかける設備投資額と楽天が25年までにかける投資額が同じになります。
この少ない投資額で、安定した通信を提供することは難しいのではないか?との声が多くあります。
ただ、2018年度の株主総会でも三木谷社長が説明してたけど、これにはワケがあるのだと思ったよ。
▶設備投資額が少ない理由
✔ クラウド型のソフトウェアの開発だから
✔ 基地局や機器のメンテナンス人件費が不要だから
✔ そもそも3Gの基地局が不要だから
➤クラウド型のソフトウェアの開発だから
楽天がやろうとしている通信キャリアはあくまで、楽天のソフトウェア技術を駆使した『クラウド型』で行いたいとのことでした。
つまり、最低限の基地局だけを用意して、あとはソフトウェア上で通信を完結させる仕組みを開発しているようです。
そのため、高い機材や機器に設備投資する必要がないとのことです。
➤基地局や機器のメンテナンス人件費が不要だから
一般的に、通信技術を更新したりアップグレードするには、基地局や機器などのハードウェアをアップグレードするのが一般的なようです。
たとえば、3Gから4Gに通信が発達したときも、基地局や機器を携帯3社は大更新することになります。(一度建てた家を、再修繕するイメージです)いっぽう、楽天ではこうした更新などもすべてクラウドをアップグレードすれば済むそうで、ハードをメンテナンスする高い人件費などがかからないそうです。
➤そもそも3Gの基地局が不要だから
そもそも、4Gからの通信だけで済むので、3Gに対応した設備が不要なことも、設備投資額が少ない理由とのことでした。3Gを使用する人のために、通信3社は3Gの更新メンテナンスが必須となります。
少ない投資額で済むとはいえ、今から基地局を都内に置いてもらえるのか、そもそも全国カバーができるのか不安要素もあります。そのため、最初から万全の体制でスタートするわけではなさそうですね。
実際に、最初は東名阪でサービスを開始するといっていますし、まだ収益見込みの計画も公表されていませんからね。もちろん、これは事実として把握したほうがいいでしょう。
▶ポイント3 5Gになるとメリットが最大化される
さいごに、この通信事業への参入は5Gが到来するとものすごくメリットがあると思われます。
5Gとは、たとえば、2時間くらいの映画が3秒くらいでダウンロードできるなど、通信速度がこれまでの100倍速くなるともいわれています。
過去さかのぼると、わたしたちはこんな風に技術の恩恵を受けてきました。
・3Gによってテキストによるメールが発達し
・4Gによって画像によるSNSやカメラ技術が発達し
・5Gでは、動画などによる未知なる技術が発達する
日本では、2020年から5Gが開始されるともいわれておりますので、
後発の楽天からすると、最初から5Gを見据えたうえで設備投資が行えるのはとてもメリットでしょう。
しかもクラウド型の楽天と比べて、他3社は既存の基地局や機器などのハードウェアを5G用に再修繕しないといけないので、設備投資額が膨らむとの見方もできます。
そのため、4Gだけの通信キャリアでは、楽天の参入は微妙な結果に終わりそうですが、
5Gの到来のおかげで、後発の楽天にも参入のメリットがとてもでてきそうです。
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今回は、2018年度の決算情報から、楽天の通信(携帯)事業へ参入の勝算を分析してみました。
結論としては、「5Gが到来すれば勝算あり!」としましたが、
もちろん、既存キャリアと比べれば、難題や課題があるのは当然です。
とはいえ、わたしたちユーザーメリットもでてきそうなサービスを、楽天らしい技術を活かして投資してくれているのは嬉しいことですね。
まだ、投資利益の見込みなどはでていないので、これからも厳しくウオッチする必要がありますが、引き続き興味深い話題となることは間違いなさそうです。これからも、一緒に応援していきましょう!
ここまで読んでいただき、ありがとうございました^^
下記のコラムも、応援の想いをこめて書きあげています。ひと休みしたら、ぜひご覧ください。
▼財務諸表・決算書を勉強してみたい方はどうぞ^^