[最終更新日]2019年12月17日↺ [読了目安]こちらの記事は5分程で読めます
『ZAIMの教室 財務諸表専門の学校』のこすぴーです。
楽天〈4755〉の2019年1Qの決算が発表されました。(2019.5.10発表)
今回は、商社マンでもあり、現在、中小企業診断士の資格勉強中のはるきさんと、一緒に見ていきたいと思います。
よろしくお願いします。今回の増収増益はちょっと特殊な理由だそうですね!
そうですね。米ライドシェア大手のリフトという会社が上場したことによって、有価証券評価益が計上されたことが要因です。
評価益…ですか?財務諸表のどこに影響する話なのか、いまいちイメージがつきません。。
有価証券評価損益は日本基準なら、損益計算書の営業外損益に計上されるんだ。でも、楽天は国際会計基準といわれるルールに則っているから、営業利益より上の項目で計上しているだよ。
わかりやすく解説するので勉強していきましょう!
▶ZAIMのキーワード
損益計算書、営業外損益、有価証券評価益、国際会計基準(IFRS)、日本基準
【まとめ】2019.05.10発表 (国際会計基準)
▶2019年1Q決算 増収増益
【増収】売上高 2,802億円 前年対比15.9%増 +384億円
【増益】営業利益 1,136億円 前年対比333.8%増 +855億円
米ライドシェア大手のリフト上場により、有価証券評価益(+1,104億円)が計上される。
▶2020年3月期見通し
定量情報の公表なし
1.2019年1Qの決算状況!
Point ➤ 要因:リフト上場による評価益の計上
みなさんもご存知のとおり、楽天株式会社は『楽天エコステム(経済圏)』と称して、本当にさまざまな事業を展開していますよね。あらためて、楽天の事業を振り返っておきましょう。
➤インターネットサービス
・楽天市場
・楽天トラベル
・楽天KoBo
・プロスポーツ
(楽天イーグルス)
(ヴィッセル神戸)
➤フィンテック
・楽天カード
・楽天銀行
・楽天証券
・楽天生命
・楽天損保
まずは、2019年1Qの決算状況を、ホームページや説明会資料、決算短信にて振り返っていきましょう。
決算IR資料はこちらにありますので、併せてご覧ください。
➤連結業績(増収増益)
▶資料1 2019年1Q 売上高と営業利益
(2019年1Q決算説明会資料より)
▶資料2 セグメント別の売上高と営業利益
(2019年1Q決算説明会資料より)
▶気づき
【増収】売上高 2,802億円 前年対比15.9%増 +384億円
【増益】営業利益 1,136億円 前年対比333.8%増 +855億円
▶分析のポイント
➤なぜ増収増益したんだろう?*楽天は「国際会計基準(IFRS)」を採用しています
2018年度の通年決算を分析したときも『過去最高益』でしたが、今回の第1四半期決算も、増収増益だったんですね。
とても好調のようにも思えるね!資料2(セグメント別セグメント別の売上高と営業利益)を見ると、一番の要因は【インターネットサービスのその他】、その増収率+12.3%、増益額+989億円!
いったい何が起きたんでしょうか?
決算説明資料と決算短信に、どうやら理由が書いてありそうだよ。
▶資料3 営業利益の詳細
(2019年1Q決算説明会資料より)
▶決算短信(一部抜粋)
投資事業においては、革新的な 技術やビジネスモデルを持つ企業への投資を進める中、2019年3月29日に当社グループの投資先企業であるLyft 社が米国NASDAQ市場へ新規株式公開を行ったこと等に伴い、有価証券評価益110,433百万円を計上しました。
要因としては、大きく書かれていました。
✔ 有価証券評価益:110.4十億円
この評価益が今回の1Q決算の利益を押し上げたようです。そのため、この有価証券評価益を除く結果としては、増収減益という結果になります。楽天の公式HPでも、ニュース通知として案内がこちらにされていました。
今回は、この評価益が財務諸表上、どんな影響があったのか勉強していきたいと思います。
2.評価損益は財務諸表のどこに影響するの?
Point ➤ 損益計算書の営業外損益で計上する(日本基準の場合)
この【有価証券評価益】というのが、財務諸表上であまりイメージが湧わかないんですよねぇ。。
すこし事例を用いて、見ていきましょう。
Case 【有価証券評価益が起きるとき】
R社がL社の【有価証券】100万円を【現金】で購入しました。数か月後、その会社が上場することになり、株価の値段がうなぎのぼりに!その額なんと、180万円!差額の+80万円【有価証券評価益】は丸もうけになりR社はL社に投資してとても大喜びです。
ここで、財務諸表上でどんな推移がされるのか見ていきましょう。
まずは、一番はじめの状態の貸借対照表(B/S)です
STEP①
>R社がL社の【有価証券】100万円を【現金】で購入しました。
①価値100万円の有価証券をを100万円の『現金』にて買う
STEP②
>数か月後、その会社が上場することになり、株価の値段がうなぎのぼりに!その額なんと、180万円!
②評価益+80万円分がP/Lの営業外収益へ
②有価証券の価値が+80万円上がる
STEP③
>差額の+80万円は丸もうけになりR社はL社に投資してとても大喜びです。
③評価益分がB/Sの利益へ
なるほど。あくまで、差額の+80万円は損益計算書の【営業外収益】で計上するんですね。
その通りです。営業外損益とは、本業以外で儲けたり損失を出したときに計上する損益のことです。日本基準で会計を行う会社の場合、有価証券評価益は【営業外収益】で計上するということです。
しかし、楽天は日本基準ではなく、国際会計基準、いわゆるIFRS(イファースと読みます)に則っています。
3.会計基準で営業外の場所が違う!?
Point ➤ 日本基準と国際会計基準では異なる
会計基準によって、【営業外損益】の場所が違うときいたことがあります!
そうなんです。そこで、国際会計基準を採用している楽天の損益計算書と日本基準を採用しているキユーピーを比べてみましょう。
補足ですが、今回の【有価証券評価益】は、実際の損益計算書では【その他】に集約されています。
▶資料4 楽天の損益計算書(国際会計基準 IFRS)
(2019年1Q決算短信より)
▶資料5 キユーピーの損益計算書(日本基準)
(2019年1Q決算短信より)
営業外収益の【その他】の位置を見て欲しいと思います。
楽天(国際会計基準)は、営業利益より上の項目に位置しています。
___一方。
キユーピー(日本基準)は、営業利益より下の項目に位置しています。
このように、
『国際会計基準では、営業外損益の一部の項目が営業利益より上の項目に位置』
しています。
逆に、営業利益より下の項目に位置している損益は、
✓金融収益
✓金融費用
✓持分法による投資利益又は投資損失
この3つだけということになります。
国際会計基準では、受取利息などの金融収支や支払利息などの金融費用と持分法による投資損益を除いて、
ほとんどの収益や費用は、事業に関して発生すると考えられるので、営業利益より上で計上するというルール
で、計上されています。
つまり、特別損益とほとんどの営業外損益は、営業利益より上で計上されるということです。
▶資料6 営業利益の数字が変わる
国際会計基準では、特別損益も全部、営業利益より上の項目に集約されるんですね。それは知らなかった…!
その通りです。今回は、国際会計基準を採用している楽天では、【有価証券評価益】がどんな風に財務諸表に影響しているのか勉強しました。
このように決算ニュースと財務諸表がいっしょにイメージできるといいですね!
ここまで読んでいただき、ありがとうございました^^
下記のコラムも、応援の想いをこめて書きあげています。ひと休みしたら、ぜひご覧ください。
▼財務諸表・決算書を勉強してみたい方はどうぞ^^