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[最終更新日]2019年7月9日
■ 自社株買い
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1.自社株買いとは?
Point ➤自社株買いは配当金と並ぶ株主還元である!
▶ANAの自社株買い発表(2017年8月31日)
(ANAのHPより)
▶自社株買い…
企業が発行した株式を、自らの資金を使って市場から買い戻すこと。買い戻した株式のことを、自己株式といいます。
上記は、ANAで自社株買いを発表したときの資料です。
たとえば、ある会社が100株を市場に発行していたとします。
60株を市場から買って自社のものとして買い戻して、世の中に出回る株式数を40株にすることです。
単純に、世の中に出回る株数が減るので、出回っている株式の価値が高まるということです。
たとえば、嵐などの人気アーティストのコンサートチケットが、100枚出回っているのか、40枚出回っているのかでは、1枚のチケットの価値が変わってくると思います。
出回っているチケット数が減ったら、争奪戦ですよね。
2.自社株買いの表示場所は?
Point ➤3つの表示場所がある!
自社株買いが財務諸表のどこに表示されるかというと、
・貸借対照表の純資産の部
・キャッシュ・フロー計算書の財務C/Fの部
・株主資本等変動計算書
具体的に、ANAの財務諸表でどのように表記されているのか確認しておきましょう。
▸貸借対照表の純資産の部
(ANAの決算短信より)
補足ですが、貸借対照表では、純資産を控除するかたちで現されます。
▸キャッシュ・フロー計算書の財務C/Fの部
(ANAの決算短信より)
▸株主資本等変動計算書の部
3.自社株買いした後の選択は2つある!
よく、自社株買いのニュース=株価が上がると認識している人がいますが、
けっしてそんなことはありません。
自社株買いをしても、必ず株価が上がるわけではありません。
というのも、自社株買いをした後の選択で、せっかく市場からの株式数が減ったのに、また戻るということもありえます。
選択は2つです。
・消却
➤自己株式を消滅させることです。完全に発行済み株式数が減ります。
・処分
➤自己株式を売却させることです。発行済み株式数が元に戻ります。
*これ以外に、まだ消却も処分もせず、自己株式として保有していることもあります
(これを「金庫株」といいます。たとえば、ストックオプションなどは最たる例です。)
株価が上がりにくいのは、後者の『処分』です。
一方、前者の『消却』は株価が上がりやすいです。
たとえば、今回のANAの自社株買い700億円がいったん自己株式として、市場から株式が減ったにも関わらず、
また他者に売却することで、市場に出回る可能性もあります。
そうすると、結局、市場の株式数は変わることはありません。
そのため、単純に自社株買いのニュースだけで株価が上がる!と判断せずに
しっかりと、その後どういう選択をとっているのかを確認することが大事であります。
4.企業が自社株買いをするメリット5つ!
では、このような取り組みをすると、
具体的にどういうことが起きるのか大きく5つあります。
企業が自社株買いをするメリットのようなものです。
①PERが低くなり株式の割安感が高まる
②ROEが向上して財務体質が良くなる
③ストックオプションとして活用できる
④金庫株として今後の資金調達ができる
⑤敵対的買収の防衛ができる
参考)自己資本比率は低下する
①PERが低くなり株式の割安感が高まる
PERとは株価収益率のことで、利益と株価の関係から割安度を見る指標です。
PERの数字が低いほど、割安と言えます。
株価収益率(PER)(”倍”で表記する)
=1株当たり株価÷1株当たり当期純利益(EPS)
自社株買いをすると、このPERが低くなるということをシミュレーションしてみました。
このように、自社株買いをすると、PERが低くなり、
投資家は「割安な株式だ!」と判断して
株式の買いが勝り、株価が上がるということです。
*補足:PERの計算式にある発行済株式数とは、自己株を差し引いた株式数のことです(会計基準の適用指針35項)
②ROEが向上して財務体質が良くなる
ROEとは、自己資本利益率のことで、株主資本(株主などから集めたお金)でどれだけ効率よく利益を稼いだかの指標です。
どうせ投資するなら、投資したお金を効率よく使って利益を上げられる会社に投資をしたいですよね。
自己資本利益率(ROE)
=当期純利益÷純資産×100
このROEが、自社株買いによって向上するのでシミュレーションしていきましょう。
このように、自社株買いをすると、自己資本利益率(ROE)が向上して、
投資家は「効率よく稼いでいる財務体質の良い企業だ!」だと判断して、
株式の買いが勝り、株価が上がるということです。
③ストックオプションとして活用できる
自社株買いをしたあと、ストックオプションとして使うこともできます。
ストックオプションとは、従業員が自社の株をあらかじめ決められた価格で購入できる権利のことです。
たとえば…
現在の株価:1株2,000円
この時点で、社員へストックオプションを付与します。
その後、自社の業績は伸びて、株価が3,000円に上昇したとします。
社員は2,000円で購入できる権利があるため、1株あたり差額の1,000円の利益を獲得することができます。
④金庫株として今後の資金調達ができる
上記でも説明をした通り、『処分』をした場合は、資金調達をすることができます。
たとえば、まだ消却も処分もせず、自己株式として保有していることもあります。
これを「金庫株」といいます。
この金庫株を、任意の時期に市場に売却させる『処分』を行うことで、
株式を売却した対価として、しかるべき資金が購入者から企業に入金されます。
・処分とは?
➤自己株式を売却させることです。発行済み株式数が元に戻ります。
⑤敵対的買収の防衛ができる
敵対的買収を防ぐ方法として、自社株買いをすることもあります。
敵対的買収とは、企業の経営者の同意を得ないまま買収をすることです。買収した会社は経営権を得るために、過半数の株式の取得をすることが多いです。
自社株買いによって、株価があがると、買収する会社は買収する金額が大きくなります。
参考)自己資本比率は低下する
自己資本比率とは、『貸借対照表における資産に占める、純資産の割合のこと』です。
言いかえれば、『自分の資産の内、どれだけが自分のものであるのか?』これを、比率で明らかにしてほしいということです。
自己資本比率
=純資産(自己資本)÷資産(総資本)×100
*総資本=他人資本+自己資本
自社株買いをすることによって、株式(自己資本)が減ると、自己資本比率も低下します。
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以上が、自社株買いの説明ですが、実際の企業の事例としてANAが最近は自社株買いを行っています。
そちらの状況も確認したい方は、下記の記事もご覧ください。
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