[最終更新日]2020年01月03日↺ [読了目安]こちらの記事は5分程で読めます
今回はタイトルのとおり、『企業が投資をすると、財務諸表にどう影響するのか?』高島屋の2018年4Q決算資料をもとに、わかりやすく解説したいと思います。
今回は、髙島屋でよくショッピングをするなつなさんと一緒にみていきます。
よろしくお願いします。普段よく行く髙島屋さんの財務諸表が見れるということで、楽しみしていました!
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1.髙島屋のまちづくりへの投資戦略がすごい!
Point ➤ 日本橋髙島屋S.C.オープン後、好調!
まずは、速報Verでのお伝えしたとおり、髙島屋の2018年4Qの決算速報を振り返りましょう。
【まとめ】2019.04.08発表 (日本基準)
▶2018年4Q決算 増収減益
【増収】売上高 9,128億円 前年対比0.6%増 +50億円
【減益】営業利益 267億円 前年対比24.5%減 △87億円
暖冬による衣料品売上不振や自然災害の影響、年末からの景気減速を受けるも、国内百貨店(+40億円)を主因に増収。しかし、先行投資の影響により減益。
➤日本橋高島屋S.Cの2018.9月開業による先行投資があるものの、売上・入店客は好調。本館は開業後、1.6倍の入店客数を記録。
▶2018年度連結決算
(2018年4Q決算説明会資料より)
▶2020年3月期見通し 増収増益
【増収】売上高 9,420億円 前年対比3.2%増 +292億円
【増益】営業利益 310億円 前年対比16.3%増 +43億円
日本橋高島屋S.Cやサイアムタカシマヤ(+26億円)の通年寄与もあり増収。国内百貨店(+14億円)を主因に増益。
➤2019.10の消費税増税による減収も見込む。
▶2020年3月期見通し
(2018年4Q決算説明会資料より)
髙島屋は、日本橋髙島屋をはじめとする『まちづくり戦略』に、とても力をいれております。
2018年2Q決算説明会資料に、”まちづくり戦略の解説”がありましたのでごらんください。
▶資料1 髙島屋のまちづくり戦略
(2018年2Q決算説明会資料より)
✔ グループノウハウを結集し、お客様満足を追求した当社独自の次世代商業施設づくり
▶資料2 まちづくり戦略の事例(日本橋髙島屋S.C.)
(2018年2Q決算説明会資料より)
このように、髙島屋は、『次世代の商業施設づくり』へ大きく踏みだしています。
とくに、日本橋髙島屋S.C.の事例は、ニュースでも大きく取り上げられていました。
特徴としては「百貨店と専門店の融合」を図り、”百貨店である本館”と”専門店である新館”が、隣同士に並んでいる一風変わった構造をしています。
ニュースでも見ました!なんといっても、新館1階入り口には、有名パン屋さんの『365日』さんが入っているんですよ!ここのパン、本当においしくて♡
テレビ東京の『ガイヤの夜明け』でも大きく特集されていましね。ここのパンは自分も食べましたが、本当においしいですよね。
このように、有名専門店を招致することで、おおきく注目を集めました。
日本橋髙島屋S.C.の新館オープン後、隣にある本館も1.6倍の入店客数を記録しているというから、まちづくり戦略のシナジー効果ってすごいんですね~。
2.投資をすると財務諸表にどう影響する?
Point ➤ 貸借対照表の固定資産とC/F計算書の投資C/Fに影響
ここからは、企業が投資をすると、どのように財務諸表へ影響するか解説していきます。2章で解説後、3章では実際に髙島屋の財務諸表を見てみましょう。
企業の投資を理解するには、「企業活動の理解」が欠かせません。
財務諸表無料講座で、『財務諸表と企業活動大事な繋がり』をお教えしました。
復習になりますが、そのなかで、企業活動を下記のように説明しています。
< 企業活動とは >
①お金を集める
②投資をする
③利益を上げる
企業活動とは、銀行や投資家からお金を集めて(①)、その集めたお金を工場などを投資して、製品やサービスを生み出し(②)、お客様から購入してもらうことで利益が上がります(③)
この3つのステップを、『財務諸表のしかるべきところを見るとわかりますよ!』と教えましたね。
▶資料3 企業活動を財務三表の大事なつながり
今回は、②投資をする と、どう財務諸表に影響するのか掘り下げてみていきます。
② お金を投資する ➤どれだけ何に投資しているのか知りたい!
上の図の財務諸表における… 『②』の箇所を見る
・貸借対照表の左側
・キャッシュ・フロー計算書の中央の『投資C/F』の部
➤貸借対照表の左側
投資を行うと、貸借対照表の左側の部に、投資資産の残高結果が表示されます。
この貸借対照表の左側のどこの部分なのかというと、
基本的には、『固定資産』の部のなかの『有形固定資産』だと思ってよいと思います。
『固定資産』の部は、こまかく内訳を分けると、下記のようになっています。
< 固定資産の部 >
✓ 有形固定資産…建物や土地などの、形がある資産です
✓ 無形固定資産…ソフトウェアや借地権などの、形がない資産です
✓ 投資その他…上記以外の1年以内に現金化できない資産です(投資有価証券や繰延税金資産など)
▶資料4 固定資産の部
たとえば、メーカーであれば、製品を生み出すための工場を建てるので、有形固定資産の建物や機械が計上されます。
髙島屋などのサービス業でも、商業施設への投資をすれば、建物や土地がここに計上されます。
このように、一般的な事業会社の場合は、
貸借対照表における、
固定資産の部のなかの
『有形固定資産』
に、投資結果が表示されています。
もちろん、これがソフトウェアなどに投資をしたら、無形固定資産の項目を見る必要があります。
このように、投資を企業が行った場合、
この固定資産の部を見ると、投資後の資産残高がわかるということです。
(前年対比をすれば、どれだけ資産が増えたかもわかりますね)
➤キャッシュ・フロー計算書の中央の『投資C/F』の部
貸借対照表では、どれだけ投資を行ったあとの資産残高がわかりましたが、
企業が投資を行い、『どれだけ現金を支出させたか(投資への支払いを行ったか?)』も見る必要があります。
それは、キャッシュ・フロー計算書の中央の『投資C/F』の部で見ることができます。
なぜ、現金を見るかというと、企業は現金が底をついた時点で倒産してしまうからです。そのため、現金をどのように使ったり、入手しているかの流れを見ることが大切だということです。
▶資料5 キャッシュ・フロー計算書
具体的に、投資活動によるキャッシュ・フローの中の、
『有形及び無形固定資産の取得による支出』
がさきほどでいうところ建物や機械に対応する箇所です。
この項目は、『どれだけ機械や建物などの有形固定資産、ソフトウェアなどの無形資産を入手して、現金を支出させたか?』という項目です。
<補足>
支出という項目があるので、収入という項目もあります(『有形及び無形固定資産の売却による収入』)
たとえば、建物を売却して現金を得たら、この項目に計上されるということです。
▶資料6 投資活動によるキャッシュ・フロー
実際には、第3章で髙島屋の財務諸表を見てみるのが、いちばん理解が進みます!さっそく見ていきましょう!
3.髙島屋の投資を財務諸表で見てみよう!
Point ➤ 投資後は利益が上がっているか確認する!
まずは、髙島屋の実際の財務諸表を見てください。
*実際の財務諸表は、企業HPの「投資家・IR」といったページのなかにある、『決算短信』や『有価証券報告書』という資料の中にありますので、ぜひ探してみてください
▶資料7 貸借対照表(2018年4Q時点)
(2018年4Q決算短信より)
▶資料8 キャッシュ・フロー計算書(2018年4Q時点)
(2018年4Q決算短信より)
第2章で説明した2つの箇所とは、この資料7・8の赤枠のところだよ!
ほんとうですね!実際の財務諸表にも、先生が教えてくれた『投資活動によるキャッシュ・フロー』と『有形固定資産』という項目がありました。
< 確認したこと >
有形固定資産:550,757百万円(17年度) → 621,228百万円(18年度)
➤+70,471百万円の有形固定資産の増加
投資C/F(有形及び無形固定資産の取得による支出):△93,130百万円(18年度)
➤93,130百万円の有形無形資産の支出
今回の、日本橋髙島屋S.C.の投資額は50,000百万円ということです。
*2018年有価証券報告書より
そのため、下記の金額の大部分に占めるものが、日本橋髙島屋S.C.の投資によるものだと推察されます。
➤+70,471百万円の有形固定資産の増加
➤93,130百万円の有形無形資産の取得による支出
どうだったかな?ニュースなどで、企業の投資のニュースがあったら、この2つの箇所を見ると数字として実感できることが分かってもらえたら嬉しいです。
たしかに、こうして現実での企業の行動と、財務諸表での数値ってこうして紐づいているんですね。
これを視覚的にも理解してほしいので、比例縮尺図にして表現してみました。
▶資料9 貸借対照表(2016-2018年度)
▶資料10 キャッシュ・フロー計算書(2016-2018年度)
わ!こう見るとC/F計算書(資料10)の投資C/Fって2017年からすごいしてるんですね!額も比べると大きい!
こうして見ると、どれだけ髙島屋さんが『まちづくり戦略』へ投資をしているかが見てとれるよね。それは、貸借対照表を見ても歴然だよ。
貸借対照表の有形固定資産を見ると、額の上がり具合は歴然です
2016年度:410,703
2017年度:550,757
2018年度:621,228
(単位:百万円)
分析をするときは、「単位を切り捨てて、生活単位でイメージできるようにしてほしい」と教えました。
こうしてみると、
2年前は40万円の資産残高だったのに、
いまでは60万円と+20万円も増えている
のが、よくわかりますね。
(+20万円のうち、+5万円が日本橋髙島屋S.C.にあたります)
補足ですが、2016→2017年度の増加は、
新宿高島屋がある「タイムズスクエアビル」を東急不動産グループから1,050億円(+10万円分)で買い戻した分のうちの土地部分
の、ようです。(建物は2014年に計上済み)
じつは、以前はあのビルや土地は、髙島屋のものではなかったのですね。
そういえば、さっきの資料1にも書いてありましたね!
▶資料1 新宿髙島屋の土地建物完全保有
(2018年4Q決算説明会資料より)
よく気づいたね!これも『まちづくり戦略』のうちのひとつで、自社ビルにすることで、自由度を確保したかったようだね。自社ビルであれば、自由に改装したり、投資することができるもんね。
なるほど~!だから、知らないところで、こうした売買が行われているんですね。たしかに、説明会資料には、今後のまちづくりが記載されていました。
▶資料12 これからのまちづくり
(2018年4Q決算説明会資料より)
このように、髙島屋は『まちづくり戦略』のために多額の投資を続けています。
そのため、さきほど勉強した貸借対照表の有形固定資産ですが、
実は、資産内での割合がとても増えているのです。
▶資料13 貸借対照表(2016-2018年度)割合%表示
ほんとうですね!41.9%→53.2%→57.6%と固定資産の割合が増えています!
ここで、冒頭のおさらいですが、②投資をする のあとはなんでしたか?
③利益をあげる ですよね…?あっ!
そうです。②投資をする の次は③利益が上がらないと投資をした意味がありません。そのため、来期以降の髙島屋は、このまちづくり戦略の投資効果を『利益』という結果で生み出す必要があるということです。
なるほど。次回の決算以降、シビアに、投資をした先の売上や利益が上がっているのか確認する必要があるんですね。
その通りです!だんだんと、財務諸表の読み方と企業の動きがわかってきたね!
もちろん髙島屋さんも、利益を生み出す必要があるとわかっているので、説明会資料には今後の増収増益を見込んでいるようだよ。
▶資料14 グループ長期プラン
(2018年4Q決算説明会資料より)
企業ってほんとうにいろいろなことを考えながら動いているんですね。やっぱり仕事をするには、こういうお金まわりの会計を知らないとダメだな~。。
ひとつひとつ学んでいけばいいと思うよ^^自分だって、何年も勉強してやっと理解できるくらいなんだから!
経営をになう役員さんだけじゃなくて、わたしたちのような労働者も、きちんと会計をわかって仕事ができるといいですね。
ZAIMの教室でも、ひきつづき、企業の実例をもとに、企業のしくみ、会計のしくみをわかりやすく解説していきたいと思います。
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ここまで読んでいただき、ありがとうございました^^
下記のコラムも、応援の想いをこめて書きあげています。ひと休みしたら、ぜひご覧ください。
▼財務諸表・決算書を勉強してみたい方はどうぞ^^