[最終更新日]2019年12月11日↺ [読了目安]こちらの記事は10分程で読めます
『日本航空〈9201〉の07~09年』を分析します!経営破綻直前のこの3年間でなにが起きていたのか?IR情報とともに探っていきましょう!
あの飛行機で有名なJALさんですね!よく使ってます!
はい、その通りです!全3回(part1~3)に分けて解説していくので、ぜひ、じっくりといっしょに分析していきましょう!^^
▶ 目次
➤part1 序章と収益性の分析←イマココ
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1.『物語』は突然に - JALが潰れるはずがない -
今回から分析するJALについて、少し前段のお話をしておきます。
2010年1月に日本航空(JAL)は会社更生法の適用を申請しました。
会社更生法って何ですか…?
ざっくり解説していくね。
簡単にいってしまえば、『わたしたちの会社はもう営業することができないので、助けてください。』という意味になります。
これは、実質上の破綻を意味します。
その当時の多くの投資家は、日本を代表する企業ゆえに、下記のように思っていたそうです。
___JALが潰れるはずがない。
そう信じていため、株を持ち続けました。
たしかに、私も当時のニュースを知っていますが本当にびっくりしました…。あんな大きな企業が潰れるわけないと思いました。
そこで活躍してくるのが、『財務諸表分析』なんです!
たしかに、たんなる印象じゃなくて、実際のお金や数字がどうなっていたのか気になります。
『破綻までの数年間、JALに何が起きていたのか。』
みなさんも、あのニュースを聞いた時に、頭の中でそう思ったことでしょう。
財務諸表を分析できる皆さんなら、覗いてみたいと思いませんか?
どんな損益だったのでしょうか?
どんな借金があったのでしょうか?
破綻までの現金の動きはどうだったのでしょうか?
まだ、財務諸表を勉強したことがない方は、
こちらのページでぜひ勉強してみてくださいね。
それでは、さっそく下記の資料をもとに分析してみましょう!
すごい楽しみです!宜しくお願いします。
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2.収益性①を分析しよう!
さて、実際に分析してみていかがでしたか?
うーん…もう驚きの結果でした。実際の数字を見てみると印象が全然違います。
そうだよね。実際の数字が読めると、なんとなくイメージから、より明確にクリアに理解できるよね。
まずは、3つの利益率の分析をしていきましょう。
< 日本航空(JAL)の収益性① >
先生も数字を見てびっくり!同じような感想を持ちました。
売上総利益率はギリギリ稼げても、
本業での儲けの『営業利益率』も、
最終的な儲けである『当期純利益率』も損失に振れていましたね。
▶ 気づいたこと
✔ 3年間で右肩下がりの利益率である
✔ 2008年に急激に利益が落ち込み始めている
✔ 業界平均3~4%より大きく下回る営業利益率である
▶ 分析のポイント
✔ なぜ売上が伸びなかったんだろう?
✔ なぜ費用が増大したんだろう?
このように、大きく捉えたあとは、細かく原因を分析していきましょう。
売上が伸びなかった理由は『経営成績』のところに、なんて書かれていましたか?
えーっと…出張客の減少やシートのグレードダウンって書いてありました。
あっ!あとは何よりも、2008年のリーマン・ショックですね!
下記が、参考資料として用意した『決算短信』の中にある経営成績から抜粋したものです。
▶ 2008年 決算短信より
下期に入るとサブプライムローン問題等に起因する米国発の金融資本市場の動揺が世界の実体経済に波及し景気の悪化が一層鮮明となるなか、輸出の大幅な落ち込み、企業収益や設備投資の減少、生産の大幅な低下、雇用情勢の深刻化等国内景気は急速に悪化しました。
この間、JALグループを取り巻く環境は、燃油価格(シンガポールケロシン)が 2008 年度に入って更に騰勢を強め、7 月には一時180ドルを突破するなど燃油費用を大幅に増加させました。その後、燃油価格は一転して急落したものの、内外景気の急速な悪化による企業の出張自粛等から航空需要が大幅に減少するなど、一年を通じて極めて厳しい状況が続きました。
指摘してくれたように、売上が減少した要因は上記の通りでした。
やはり、2008年のリーマン・ショックによって大きな打撃を受けたようです。
ちなみにシートのグレードダウンってわかりますか?
うーんと、なんとなく(笑)
お客様シートのグレードダウンとは、
たとえば、ファーストクラスを今まで利用していた人が、不景気の煽りを受けて、
ビジネスクラスやエコノミークラスへ変えることをいいます。
ファーストクラスやビジネスクラスは、エコノミークラスとは比べると、
かなり高単価なため、ここが激減すると大打撃ということですね。
では、参考資料の費用が膨らんだ要因は何でしたか?
うーんっと、やっぱり一番高い燃油費ですかね?
きちんと大きい数字からチェックできていますね!
参考資料につけた費用明細を見ると、たしかに2008年の燃油費が509,100円と大きいです。
次に高い金額の項目は何でしょうか?
人件費です!
燃油費と人件費を合わせると786,800円と費用総額の約半分を占めます!
そのため、主にこの2つが原因で利益を圧迫したと言えます。
また、余裕があれば、年毎の推移も見ておきましょう。
燃油費は2003年と2008年を比べると約2倍に膨らんでいます!すごいことになってる…!
人件費の推移はどうかな?
人件費は…下がっている?
こちらも、『決算短信の経営成績』にこのように書かれていました。
▶ 2007年 決算短信より
さらに、エンジン洗浄の頻度増加等による燃油消費量の削減など、自助努力の徹底に加え、効果的な燃油ヘッジの実施により燃油費の上昇を大幅に抑制しました。また、人件費についても、基本賃金の 10%削減の継続に加え、臨時手当の大幅な抑制、特別早期退職措置の地上管理職や客室乗務員への実施、退職給付関連制度の改定などにより削減に努めました。
賃金10%カット
臨時手当の大幅抑制
早期退職措置
退職給付の改定
・・・
このような兆候が表れた時には、要注意ですね…!
なるほど。こうやって、大きく捉えて、細かく見ていくんですね~。
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3.収益性②を分析しよう!
つづいて確認するべきは『資産に占める利益の割合』です!
ROAやROEですね!
よく覚えていたね、正解!
▶ ROAやROEの復習したい人はこちらへ(収益性②の解説)
まずは、3つの資産利益率を分析していましょう。
大事なことは、下記のことでした。
『大きな資産を持っているならば、それだけ大きな利益を生まないと割に合っていない』
< 日本航空(JAL)の収益性② >
2008年から、ズドーンと大きく下がっています…。
本当に、数字が物語っていますね。
2009年のROEが顕著な数字ですが、
分母の純資産も下がっているだけではなく、それを上回る大きさの損失を出したということです。
▶ 気づいたこと
✔ 大きな資産を持っている割に、十分な利益を生み出せていない。
✔ 8%の優良ラインをクリアしていない。
▶ 分析のポイント
✔ ライバル他社と比べたらどうなんだろう?
✔ なぜ利益が出なかったんだろう?
そろそろ他社比較分析をしてみましょう!前回の3つの利益率と今回の資産利益率をANAと比べたらいかがでしたか?
これが不思議で、利益率は下がっているものの、損失はでていないんです。
そうだね。これもぜひ深く考察したいところです!
< 全日本空輸(ANA)の収益性② >
やはり、きちんと同業他社と比べると明らかになるものが出てきます。
『不景気だから、しょうがない』と結論つけたくなりますが、
実際はライバル他社のANAを見るとそういうわけではないとわかりました。
そこで、JALが利益を圧迫した本当の理由を見ていきましょう。
JALの経営成績の文章を読んでみると、下記のような文言を多く見受けます。
▶ 2008年 決算短信より
機材面では、成田=ニューヨーク線、サンフランシスコ線、羽田=上海線の運航機材をボボーイング747-400型機から777型機へ、成田=広州線、上海線、杭州線や関西=上海線、広州線等の運航機材を中型機ボーイング 767 型機から小型機ボーイング 737-800 型機へ変更するなど、機材のダウンサイジングを積極的に進めました。
▶ 2007年 決算短信より
コスト面では、燃油価格(シンガポールケロシン)がバレルあたり一時130ドルを突破するなど、歴史的高水準で推移しましたが、路線のリストラや燃費効率の良い中小型機への更新を促進するなど、「再生中期プラン」に沿った施策を着実に実施しました。
なぜこのような、「中小型機への更新」の取り組みをしているのか、事例で解説してみます。
▶ 中型機から小型機へのダウンサイジングとは?(同じ羽田-上海便)
*たとえば、A社とB社が下記のような飛行機で30人の乗客が乗ってくれたとします。
A社
30人/100人乗り
チケット収入:60万円
燃料費:100万円
利益 △40万円
B社
30人/50人乗り
チケット収入:60万円
燃料費:50万円
利益 10万円
*チケット収入はひとり2万円とする
*燃料費は1人分の大きさで1万円とする
例:100人乗りの飛行機×1万円=100万円の燃料費
このように、不景気になり乗客数が減って同じ30人を輸送しているのに関わらず、
A社は損失で、B社は利益をあげています。
どういうことか?
よく、JALとANAの特徴で挙げられるのが…
✔ JAL ➡ 大型機を多く保有
✔ ANA ➡ 小型機を多く保有
されていたとされています。
なるほど~!だからJALは急いで、中・小型機を買い替えていたんですね!
その通り!でも、そのタイミングで買い換えたら費用が多くなり、利益を圧迫してしまうよね。
できれば、リーマン・ショックの不景気になる前に、こうした対策を打っておけたら、ANAと同じように損失は免れたのかもしれません。
最後のこの分析は中々できませんが、
『なぜ?』と疑問を持つことは忘れないようにしましょう!
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4.収益性③を分析してみよう!
最後の収益性分析です!セグメント別に見ていきましょう。
飛行機以外もあるってことですね!
▶ セグメント分析を復習したい方はこちらへ(収益性③の解説)
さっそく、JALのセグメントを見ていきましょう。
< 日本航空(JAL)のセグメント情報 >
このセグメントを見て、どんなことを考えたかな?
『航空運送』の売上がほぼJALの売上を占めていました!
正解っ!よく気づいた!
たしかに、ほぼ『航空運送』でJALの売上は占められていました。
航空運送とは、もちろん飛行機での輸送サービスのことですね。
▶ 気づいたこと
✔ 『航空運送』で売上がほぼ占められている
分析のポイント
✔ 他のセグメントはどんな事業か確認する
他にも、どのようなセグメントがあるのか見てみましょう。
▶ 日本航空(JAL)のセグメント
✔ 航空運送…旅客・貨物の取り扱い業務
✔ 航空運送関連…機内食、航空機及び地上機材等の整備、給油関係
✔ 旅行企画販売…旅行の企画販売
✔ カード・リース…金融業、リース業、カード業
✔ その他事業…ホテル・リゾート事業、商事・流通その他事業
こうして見てみると、当たり前のことかもしれませんが、
『航空運送』を中心に、そこに直接絡む事業を営んでいる
ということがわかります。
ここの『直接絡む』というのが大事なキーワードになっていきます。
ここでもう一度、セグメントの考え方をおさらいしておきます。
1つの会社でいくつもの事業を行う理由に、『リスク分散』を教えました。
たとえ、1つの事業が傾いたとしても、
いくつかの事業を持っていれば、そちらの事業でもちこたえることができます。
では、JALの場合のセグメントはいかがでしたか?
たしかにいくつかの事業がありますが、ほぼ稼ぎは『航空運送』でした。
解説していきましょう。
たしかに、事業としてはいくつも持っているのに、ほとんどの儲けは『航空運送』事業でした。
これは、実質、『単一セグメント』と解釈してもよいと思います。
つまり、
『航空運送』事業が傾いたら、会社として倒産の危機がある
ということです。
しかも、少なからずある他の事業もすべて、直接的に『航空運送』事業と結びついています。
▶ 『航空運送』との結びつき
✔ 航空運送関連…乗客がいないと機内食も販売する機会を失う
✔ 旅行企画販売…乗客がいないと企画をしても赤字になる
✔ カード・リース…乗客がいないとJALカードを使用してもらえない
✔ その他事業…乗客がいないと、ホテルもリゾートも利用してもらえない
このように、単一セグメントの場合は、諸刃の刃な側面もあり、リスクがある可能性があります。
なるほど~。だから、『航空運送』次第なんですね…。どこか切ない。
もし皆さんが事業経営者の場合、手広く広げすぎずとも、リスク分散は必須と言えるでしょう。
ここまで読み進めて大変お疲れさまでした^^
つぎはpart2でJALの安全性を見てみましょう!
>> 日本航空(JAL)07~09年 企業分析 part2はこちらへ
▶ 目次
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